アドベンチャーライフ

(株)リンクマネージ
常務取締役 山岡清太

VIP大手町 スピーチ(2002年11月5日)



1. 私の略歴  〜教会育ちのビジネスマン〜

 株式会社リンクマネージの山岡清太(せいた)と申します。当社はいわゆるインターネットベンチャーで、Eコマースサイト、つまりインターネットショップ構築のためのシステムアウトソーシングサービスを主力としています。

私は牧師家庭に生まれ、大学卒業まで関西で過ごしました。牧師の子供がクリスチャンになるとは限りませんが、私の場合は高校時代に導かれ、学生時代は教会学校の先生などの奉仕も行っていました。その後5年間程教会から離れた時期がありましたが、7年前に結婚してからは家族で教会に出席しています。大学卒業後、1988年(株)神戸製鋼所に就職しました。事務屋として海外営業(アルミの輸出)、人事部(海外人事制度の管理運用など)を経て、その後米国に留学(アトランタ、 エモリー大学経営大学院)、2年後に帰国後は栃木県にあるアルミ圧延工場での損益管理や、東京本社で事業部の損益管理をしてきました。4年前に11年お世話になった神戸製鋼を退職、ベンチャー企業に移って現在に至っています。


2. ライフワークを求めて  〜神戸製鋼サラリーマン時代〜

 私には一つの悩みがあります。天職という言葉がありますが、自分は一生を捧げて何をするべきかということについて考え続けてきました。自分にとって天職とは何なのか、神様は私に何を求めていらっしゃるのか、その確たる答えが社会に出て15年を経た今もまだ見つからずにいるのです。

今回は、私がライフワークを探し求めてきた道中を皆様とシェアさせていただき、ビジネスと聖書の教えを両立させることについてご一緒に考える時間を持てればと思っています。ちなみに『アドベンチャーライフ』(=冒険人生??)というテーマはVIP大手町会長の金森一雄様に付けていただきました。私が神様の思し召しを求めてベンチャー企業の中で右往左往している様子を言い得ていると思います。

さて、学生時代私は事務系学部に在籍していましたので、大学4年生になって就職活動が始まりましたが、これがやりたいというはっきりした志望がなかったため、ただ数多くの会社を訪問するだけでした。そんな中で一世代上の先輩に「社会に出てどんなところでもいいから10年やってみろ、そしたら社会の構造がわかるよ。自分のライフワークはそれから考えればええ。」というアドバイスをもらい、「そうか、10年間は社会勉強や。どこでもいいからこれからの10年間で自分を鍛えてくれそうなところに就職しよう。」結局、どこか荒っぽそうな先輩方が揃っていた神戸製鋼に「この人たちに揉まれたら鍛えられるやろな」と魅力を感じて入社しました。

神戸製鋼ではまずアルミの輸出を3年間担当。飲料缶やエアコンフィン、航空機や車両などの素材となるアルミ板類を海外マーケットに売る仕事です。急激に広がる人間関係、外国人との折衝、そして数ヶ月に1度のペースの海外出張と、毎日が楽しくて仕方ありませんでした。東京はとにかく刺激的で、週末も友人と出掛ける予定で埋まり、この時期教会からは足が遠ざかりました。忙しくて教会に行ってる暇などなかったのです。ビジネスマンって面白い、今は「担当者」でこんなに面白いのだから、きっと係長や管理職になったらもっと大きな仕事ができて視野が広がり、さらに楽しいに違いない。俺は神戸製鋼でアルミ業界のスペシャリストになってそれをライフワークにしようか。このように考えもしました。


3. アメリカ留学での転機

ちょうどこの頃はバブル期の絶頂期でしたが、会社に社内公募留学制度ができました。この時期どこの企業でもこぞって導入した制度です。仕事をしながら2年間勉強し、入社6年目に米国アトランタのビジネススクールに企業派遣の身分で留学しました。この2年間の滞米生活が私の意識を全く変えることとなりました。

 日本でサラリーマンをやって、自社内での付き合いに没頭していると、えてして自社のことしか考えないようになりがちです。どうやって売上を伸ばすか、シェアを伸ばすか。コストダウンをやるか。構造不況の中、神戸製鋼アルミ事業はいかに生き残るのか、等々。

しかし、アメリカで見たものは全く新鮮でした。滞米生活で受けた刺激は簡単には語り尽くせませんが、現地で行った教会のことをお話したいと思います。アトランタ到着後、現地の人と仲良くならねばとばかりに、私は早速適当な教会を探し始めました。ちょうど若い世代向けの伝道のために母教会から分かれたという教会が近くにあり、そこに行ってみました。礼拝出席は800人ほどの新しく大きな教会で、若い人が中心ですから最年長でも40歳くらい。礼拝には賛美ありダンスあり楽器あり、とてもエネルギッシュな教会でした。礼拝後、大人向けの教会学校が催されていました。クラスは7つ: 大学生クラス、社会人(独身)クラス、新婚クラス、夫婦クラス、旅行者・出張者クラス、離婚者クラス(いかにもアメリカ!)、そしてInternational(外国人)クラス。私は早速Internationalクラスに出向き、早く溶け込むべく自己アピールしました。いはく、「自分は牧師の子供で、日本の教会で育ち、ずっと通っていた」大学卒業後5年間、教会から遠ざかっていたことなどおくびにも出さずに。このクラスではアメリカ人の教会員がクラスを担当していました。数年間で当地を去って行くことが多い外国人相手に、自分には何の得にもならないのに、イエス・キリストと聖書のことを一生懸命伝えているのでした。2年間私はこのクラスにどっぷり浸り、最後にはFellow(=委員)としてクラスを企画する側に回ることになりました。こうして私は教会に引き戻されたのです。

この教会を通じて多くの人と知り合い、様々な活動を知りました。ある人を通じてMissionaryのことを知り、夏休みを利用して参加、ロンドンで3週間を過ごす経験もしました。総勢60名、中心はアメリカ人、欧州人、それに韓国人で、日本人は自分一人だけです。郊外のボロ教会にて寝泊りし、日中はイスラム教徒とクルド人に伝道のためのパンフを配るのです。イスラム寺院に潜り込んだり、ロンドンの中心街でパントマイムをやったりもしました。Missionaryの参加者はよく"Needy"という語を使いました。つまり求められているところで働くことこそ重要なのだと言うのです。

米国での2年間の生活を通して強烈に学んだこと、それは自分は神様に喜ばれる生き方をしよう、Needyなところで役に立つことをすれば神様に喜んでもらえる、ということでした。


4. ベンチャー企業へ

では自分はライフワークとして何をするべきなのか。Needyなところ、世界平和に与するNGOに転職しようか。しかし、自分は会社からお金を得て留学している身分であり、帰国後5年間は退職してはいけない旨の紳士協定もある。よし、5年後に会社を辞めよう。それまでは精一杯働いてお金を出してくれた会社と同僚・先輩たちに恩返ししよう。その間に適当なNGOでも見つければよい。

そしてあっという間に3年半が経ちました。その時点でもNGOへの願望は持ちつづけていましたが、具体的な展望は全く描けずにいました。そんな頃、神戸製鋼のアルミ銅輸出部門の1年後輩で、一緒に新入社員時代を過ごしたK君から飲みの誘いがありました。彼は少し前にベンチャービジネスを創業し、アルバイト1名を雇っていました。彼は唐突に言いました。「うちに転職しませんか?」非常に驚きましたが、即座にお断り。「事業を成功させて一攫千金を狙うような生き方は、俺とは全く違う!俺は、世界平和に貢献するNGOに参加するんや」「具体的に計画はあるのですか?」「いや、何もない」「じゃあ、将来自分でNGOを立ち上げればいいじゃないですか!」起業家K君のこの一言で私の考えががらっと変わりました。そうか、そんなことができるんだ。ならばまずは彼の立ち上げたベンチャーを一緒にやって、大きくし、組織運営を実践で学ぼうか。NGOといっても具体的な計画は何もないのだから、まずベンチャーで2〜3年やってみよう。その間に次の道が開けてくるかもしれない。

こうして私のベンチャー企業(株)リンクマネージでの"修行"が始まりました。神戸製鋼での後輩、K君が私の上司、社員は私のほかにアルバイトが1名のみです。初出社後、K社長に会社の通帳を見せてもらった時のこと。たったの250万円しかないではありませんか。これでは2人の月給の支払いだけでも、すぐに干上がってしまいます。俺はこういう世界に来たんやなあ、と逆に妙に楽しい気分になったことが思い出されます。その後、あっという間に3年半が経ってしまったのですが、この間キャッシュが尽きかけたり、人事の問題で悩んだり色々なことがありましたが、社員も20名を超え、何とか支えられて今に至っています。


5. 信仰を持つビジネスマンの方々に触れて

さて、今までビジネスマンをやってきましたが、そもそも株主利益の追求を存在理由とする企業活動と、神様に喜ばれることとの両立はありえないのではないかと感じ続けて来ました。大企業だろうがベンチャーであろうが利益追求を目的とするビジネスマンとして仕事をしている限りにおいては、最終的には聖書の教えに沿わないのではないのかと。

しかし、今年(2002年)になってビジネスを通して神様に喜ばれること生き方をしていらっしゃる方を目の当たりにすることになりました。

今年(2002年)の6月、ある人に紹介されて当社の役員3名が揃ってある研修を受講しました。それは人生の目標を達成するためにいかに行動するか、というようなテーマの研修でした。ここでは全く予期していませんでしたが、講師(アチーブメント(株)青木社長)がクリスチャンであり、研修の土台となる概念はまさに隣人愛のことが説かれている内容で、コースの中には聖句も登場していました。彼がクリスチャンと知った私は早速自分の想いを話したところ、青木氏は「自分はトレーナーとして神様の証しを行う人生を生きているからには神様は祝福してくださる」ということをおっしゃられました。この人はビジネスを行いながら福音を伝えている!これは私にとって大きなショックでした。こんなビジネスマンもいるんだ!

青木社長よりVIPクラブのことをチラッと伺ったので、自分でインターネットで調べ、聖書に指針を求めるビジネスマンの集まりであることがわかって、早速最寄の会に参加。そこで元カネボウ筆頭専務・三谷康人氏(VIPセントラル会長)のお話を伺うことができました。この方はカネボウにて主に管理畑を歩まれた方ですが、いきなり営業部長に抜擢され、「八味地黄丸(じはちみじおうがん)」という老化予防などに効果があると言われている漢方薬の売上をご在任中の1年半ほどの間に月2千万円/月から1億5千万円/月に伸ばされた実績をお持ちの方です。 「夜中にトイレに起きて困っていたが、それが治った」といった消費者からの声に励まされ、「俺たちは困っている人を助ける仕事をしているのだ!」と部員ともども一丸となって取り組んだ結果だったそうです。


6. 『仕える者になりなさい』、『皇帝のものは皇帝に』

聖書は仕える者となりなさい、と私たちに教えています。『いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい。』(マルコによる福音書9:35) 『あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者になり、いちばん上になりたい者は、すべての人の僕になりなさい。』(マルコによる福音書9:43、44)『あなたがたの中で偉くなりたい者は、皆に仕える者になり、いちばん上になりたい者は、皆の僕になりなさい。』(マタイによる福音書20:26) カネボウの三谷氏が取り組まれたビジネスは"人助け"つまりまさに人に仕える仕事でした。三谷氏もまた、ビジネスを通して聖書の教えを実現されていたのです。

振り返って今の自分はどうか。会社はEコマースのシステムを提供することを主事業としている。これは人に仕えることをしているのだろうか。しかし、我々の事業は漢方薬のように病気の人を直接助けているわけではないが、少なくとも20名の社員を雇用しているではないか。そして将来事業が成功した場合には、新産業として裾野が広がって当社だけではなく他にも雇用機会を増やすことに繋がるかもしれない。これは立派な"人助け"ではなかろうか。こう考えると、少し光が射してきたような気がしました。

自分も以前は大企業の社員だったが、大企業の中で歯車と言われて自分の担当業務を黙々とこなしている人は、まさに仕える人だ。ということは歯車であればあるほど、仕える人となり、神様の視点では偉いのではなかろうか。そのようにも考えました。

そんなことを考えている中、次の聖句が与えられました。『皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。』(マタイによる福音書22:21) これはパリサイ派とヘロデ党の「税金をローマに納めることは律法にかなっているかどうか」という意地悪な質問に対するイエス・キリストの答えです。皇帝のもの(=現世にあるお金)は皇帝に、そして何よりも大切な神のもの(=神様を信ずる心)は神に帰するべきだ、つまり神様を信ずる心をもって、税金など世の中のルールに従いなさいとの教えと解されているようです。つまり、聖書は経済のルール自体を決して否定していないのです。

以前ある社員に質問されたことがあります。「山岡さんはクリスチャンなのに、ことお客さんとの交渉事になるとがめついですよね。自分の中でどのようにバランスをとっているのですか?」つまり、お客さんとのクロージングの際は一万円でも高く、単価であれば千円でも高く契約するためにどのような口上を使うかということに腐心し、また仕入交渉時には徹底的に時には相手の弱みを示すなどして値引きを迫る様子を指しての指摘でした。この質問を受けた際、とっさにうまく回答できませんでしたが、今同じ質問をされればこう答えることになるでしょう。「聖書には人に仕えよと書いてある。また経済のルールは否定していない。私たちはビジネスを通じて経済のルールに則って社会貢献し、人に仕えているのだ。我々にとっての経済のルールとは株主利益の最大化、利潤の追求であり、そしてその効果を最大限にする義務がある。だから日々の仕事の中で、一万円でも高く契約をとり、少しでも安く仕入れるように努力するのだ」と。


7. ビジネスマン・クリスチャン/クリスチャン・ビジネスマンとして

 話は変わりますが、色々考えを巡らせた末、最近こう考えるようになりました。それは、ビジネスマン・クリスチャンとして、クリスチャン・ビジネスマンとして、神様に喜ばれる生き方をしようということです。ビジネスマン・クリスチャンとして、神様に喜ばれることは何か。それは所属する教会や、地元の教区などでビジネスの知識を生かして精一杯奉仕することではないでしょうか。私はちょうど今春から教会学校先生の奉仕を学生時代以来14年ぶりにはじめたところでしたので、さしあたってはこの仕事に責任をもってあたろうと考えています。ではクリスチャン・ビジネスマンとしてはどうだろうか。これは先ほど申し上げたように社会貢献(=社会に仕える仕事)となるビジネスに取り組むこと。今自分が取り組んでいる仕事が、自分に与えられたタレントと時間を最大限に使って貢献できるビジネスや職種なのかどうか、それにはまだ確たる信念を持つには至っておりませんが、その入り口が見え始めてきたところでしょうか。

 自分のライフワークを探す中、ビジネスマン・クリスチャンとして、自分がなすべきことの50%は理解できました。残りの50%、クリスチャン・ビジネスマンとしてなすべきことについてはまだそのうちの10%位しか見えていない状態です。残りの40%を引き続き祈り求めて行きたいと思います。その際にはVIPクラブでお会いする人生の諸先輩方の生き方を伺うことがこの上もなく参考になるのです。ですから、これからも当クラブで色々な方と出会い、お話を伺いたいと思っていますのでよろしくお願い致します。

以上


<山岡清太 略歴>

1965 大阪生まれ
1988-93 (株)神戸製鋼所入社、アルミ板輸出、人事
1993-95 米国留学(Goizueta Business School, Emory Univ.)
1995-99 経理、企画管理
1999- (株)リンクマネージへ


<株式会社リンクマネージ 会社概要>

設 立 1997年2月 従業員 21名
資本金 124百万円 売上高 234百万円('02年3月期)
役員 代表取締役社長 久保田明史
常務取締役 山岡 清太
取締役 小川 義人
主要事業
EC&CRMシステムアウトソーシングサービス
WEBサイト評価サービス、WEBビジネス・Eコマースコンサルティング
ホームページ企画・制作
WEBサイト  http://www.linkm.co.jp